ポリヴェーガル理論入門

自分を大切に、とか自分に優しくという言葉を耳にすると思うのですが、それが簡単にできないからこそこのような言葉が生まれるのですよね。今日は、自分に思いやりを持ちやすくなるようなお話しです。

それは、自律神経の話なんです。あー、はいはい、また自律神経ですか。と思われた方もいるかと思うのですが、これは一歩踏み込んだ自律神経の話です。ストレスやリラックスレベルの自律神経のはなしではなく、私たちの感情や行動に影響を与えている自律神経の話です。視線や声で、自分や相手の神経系の状態を観察することもできるようになります。

人と会うと疲れたり、ちょっと嫌なことがあると一人で塞ぎ込みがちだったり、何かしらに追われていると焦ってしまい、うまくパフォーマンスができなかったり。もしくは、どんな場面でも緊張してしまって、繊細な自分を責めたり、そんな経験はありませんか?性格やメンタルの強さと表現されることもあるこれらの反応ですが、じ・つ・は、自律神経の反応なのです。この神経系と私たちの反応である感情、行動、この繋がりを理解する手助けになるのが、ポリヴェーガル理論です。


ポリヴェーガル理論とは?

ポリヴェーガル理論は、神経科学者の Stephen Porges先生によって提唱された、自律神経系がどのように「安全」や「危険」を感知し、私たちの感情や行動に影響を与えるかを説明している理論です。

これまで、自律神経は副交感神経(リラックス、休息)と交感神経(ストレス、緊張)の2つだと考えられていました。交感神経はよく闘うか逃げるか反応、闘争・逃走反応などとも言われます。この2つに分かれているという考えから、よくシーソーに例えて説明されてきました。副交感神経が有意な時には、交感神経が落ち着いている。交感神経が有意な時には副交感神経が優位になる。この2つが交互に上下するのが理想の状態だと考えられてきました。

この本はまさにその2つの切り口から書かれています。ちなみにこちらの本は、全然面白くなかったです。笑 面白すぎて眠れなくなるかもよ!って言われていますが、余裕でぐっすり眠れました。


ポージェス先生が言っていることをとてもざっくりまとめると:

  • 自律神経系は安全と危険を無意識に評価している。

  • 副交感神経(迷走神経)には進化的に異なる2つの経路がある。

  • 神経系は階層的に機能する。

  • 社会的つながりが神経系の調整に不可欠である。

  • 防御反応は生存のための適応である。

  • 安全の感覚が健康と癒し(トラウマからの回復、ヒーリング)の基盤となる。

  • 交感神経は「闘争・逃走」だけでなく、行動のためのエネルギー源である。

聞き慣れていないと「はて??」な言葉もあると思いますので、ここから要点をちょっと詳しく説明していきます。

3つの神経系の状態

1. 腹側迷走神経(Ventral Vagal)

キーワード:安全とつながり

この状態では、安心感を感じ、人とのつながりを楽しむことができます。

こんな感じが腹側迷走神経の状態

  • 落ち着きと安心感

  • 社会的なつながり

  • 柔軟な思考と感情の安定

  • 自分が自分でいる感覚(IFSで言うところのSelfの感覚)

  • *IFSについては別記事を書きたいと思います

2. 交感神経(Sympathetic)

キーワード:可動化、エネルギー源

交感神経の状態は、多くの場合Fight&Flight反応(闘争・逃走反応)として説明されますが、これは交感神経の一部分に過ぎません。実際には、交感神経は身体を動かし、エネルギーを生み出すための重要なシステムで、交感神経は、日常生活における前向きな活動にも関与しています。危険への反応だけじゃないんです。悪者に捉えられがちですが、他の2つの状態と同じく重要な働きです。

交感神経はこんな感じ

  • 新しいことに挑戦するときのワクワク感

  • 仕事やプロジェクトへのモチベーション

  • 運動しているときの活力

  • プレゼンテーション前の適度な緊張感

  • 目標に向かって集中している状態

このような状態は、腹側迷走神経と協調して働くことで生まれる「安全な動員(Safe Mobilization)」や健全な可動化と呼ばれます。

危険を察知した時の交感神経はこんな感覚を伴います

闘争

  • 批判されたと感じたときに、強く反論したくなる

  • 理不尽な状況に怒りが湧いてくる

  • 自分や大切な人を守ろうとして、強く主張する

  • 交通渋滞やトラブルに対して、イライラが高まる

  • 意見の対立の中で、攻撃的または防御的になる

逃走

  • 締め切りに追われ、焦りながら急いで作業を進める

  • 不安を感じて、その場から離れたくなる

  • 人前で話す場面を避けたくなる

  • 問題に直面したとき、過度に忙しくして気を紛らわせる

  • 緊張する状況から距離を置こうとする 

簡潔にまとめると

  • 闘争(Fight):怒り、攻撃性、イライラ、支配的な態度

  • 逃走(Flight):不安、焦り、過度な忙しさ、回避行動、完璧主義

交感神経の働きは、健康的な活性化から防御反応まで連続的に存在します。もっとわかりやすく言うと、明日の試合楽しみだな!わくわく!!→試合が近づくにつれ、緊張が高まる→不安も強くなりその場から逃げたくなる

こんな感じで安全な可動化から危険を察知した反応に、流れるように変化していきます。でも、全ての安全な可動化が防御反応に変化するかというとそう言うわけではありません。

3. 背側迷走神経(Dorsal Vagal)

キーワード:シャットダウン、フリーズ

危険に直面した時、安全も感じられないし、戦っても勝ち目はなさそう、逃げることもできない、、!と判断されたとき、神経系はエネルギーを節約するためにシャットダウンの状態へ移行します。凍りつき反応と言われたりもします。

特徴

  • 無気力や疲労感

  • 感情の麻痺

  • 社会的な引きこもり

  • 解離感



自律神経を調整するとはどういうことか

よく「自律神経を整えましょう」と聞きませんか?副交感神経を常に優位にすることが自律神経を整えることではないんです。私はよく講座で、この3つのステートを車のギアだと思ってくださいとお話しします。パーキングやリバース(バック)、前進するための一速、二速、ニュートラルなど、どのギアも車を適切に走らせるためには必要です。駐車場に停めたいのに一速に入りっぱなしでは困るし、車道を走っているのにいきなりリバースに入られても大慌てですよね。必要な場面で、必要な程度、そのギアにスムーズに移行できることが調整が取れた状態なんです。どこかにスタックしていない、必要以上に長く居続けない。

腹側迷走神経が理想的な状態ではありますが、いつものほほんと生きていけるわけではないじゃないですか、人生って。車に轢かれそうになったら、ちゃんとびっくりする必要があるし、もし大切な人を亡くしたらご飯が喉を通らないくらい悲しみに暮れることもあるかもしれません。3つのステートはどれも、私たちが生きていく上で必要で、常に私たちを「生かそう」と働き続けてくれています。

なので、すぐにイライラしてしまう自分、落ち込みがちな自分を攻めるのではなくて、どうしたら必要以上にそこにとどまらず、安心を感じられるステートに戻って来れるのか、そこに目を向けていきたいですね。

自律神経の調整力を上げるためにできること

そのギアをスムーズに保つ(調整力を上げる)ために、何ができるのか、安心安全を感じられるステートに戻りやすくするためにできることとは。

調整力を上げるには2種類あります。

一つは自分一人で調整する自己調整、セルフレギュレーション。もう一つは他者と一緒に調整する共同調整、コーレギュレーションです。私たち人間の神経系は、他者とのつながりを通して調整される側面があるんです。安心できる人の存在や、温かい声、優しいまなざしなどは、私たちを腹側迷走神経の状態へと導いてくれます。

共同調整の例

  • 信頼できる人との会話

  • 穏やかなアイコンタクト

  • ハグや優しいタッチ

  • ペットとの触れ合い

  • 落ち着いた声を聞く

ただただ自律神経の調整が取れた人のそばにいるだけでも、私たちの神経系は変化します。他者の神経系の状態が自分の神経系に影響をもたらすということは、自分の神経系の状態が相手の神経系の状態にも影響するということです。なぜか子どもに好かれる人、逆に避けられる人いませんか、、?それから、ポリヴェーガル理論の視点で赤ちゃんの夜泣きや癇癪を見ていくと、それらは困った行動ではなくて、未成熟な神経系による自然な反応として捉えることができます。

ここまで読むと、なぜこの記事のトップの写真を選んだのかわかっていただけるかな?と :)

自己調整、セルフレギュレーションの例としては

  • 深呼吸をする

  • 散歩に出かける

  • 温かい飲み物を飲む

  • ジャーナリングをする

  • 信頼できる人と話す

  • 音楽を聴く

  • ストレッチをする

  • 自分に優しい言葉をかける

まとめると、自分が「ホッとする」こと、気持ちいいなと感じること、なんかいいな、の感覚を感じられることを通じて神経系に変化を起こスノが自己調整。防衛反応(危険を察知した状態)に入るきっかけをトリガーといいますが、その反対で私たちに安心・安全を教えてくれるサインをグリマーといいます。自分にとってのグリマーはなんなのかを観察してみるのも、自己調整力を上げるためにとても大きなヒントになります。

アメリカでセラピー関連の学びをしているとポリヴェーガル理論は完璧ではない、ここが欠けている、こっちにも説明しきれていない箇所があるなどあれ言われていたりするのを目にするのですが、そもそも完璧な理論であろうとなかろうと、ポリヴェーガル理論を知ることで、自分の困った行動をみる目が変わると思うのですよね。子どもの感情の起伏や行動の理由も理解することができるから、自ずと対応も変わります。他者との間でお互いに神経系に影響を与えると言う観点を見ると、クライエントの身体を直接触るセラピストの方やヨガを教えられている先生なんかも、この辺の知識があるとより深いレベルでお仕事を捉えることができそうだな、と考えたり。もし、この記事をきっかけにポリヴェーガル理論に興味を持たれた方はぜひ、ちょっと学びを深めてみてください。私のおすすめの本はこちらです。

カウンセラーや教員の方にはこちらがおすすめ

ボディワーカー、ヨガの先生など身体を介する方向けはこちら

子育てに活かしたい方はこちらもよいかと

是非是非、コメントで感想を教えてください :)
最後まで読んでくださりありがとうございます!

まなみ

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